コンクリートは溶ける?原因や化学的侵食を詳しく解説
私たちの身近なところに存在しているコンクリートは、道路や橋、堤防などのインフラを支える重要な役割を果たしています。しかし、一見頑丈そうに見えるコンクリートも、じつは立地や環境などによって溶解してくることをご存知でしょうか。
このような状態になることを「コンクリートの化学的浸食」とよびます。本記事では、コンクリートの化学的浸食はなぜ発生するのか、基本的なメカニズムや、化学的浸食を引き起こす主な原因物質についても詳しく解説します。
「コンクリートが溶ける」とはどういうことか?
そもそも「コンクリートが溶ける」という言葉を聞くと、溶岩のようにドロドロとした液状化をイメージする方も多いと思います。しかし、実際にはこのようなことはなく、コンクリートの表面がポロポロと崩れ落ち、分解してくる現象のことを「溶ける」と表現する場合があります。
このように、コンクリートの強度が低下し溶けることを、専門用語では「化学的浸食」といいます。なお、コンクリートの化学的浸食は大きく分けて以下の2種類が存在します。
セメント水和物の溶解
コンクリートはセメントと水、砂利などによってできています。セメントは水と混ぜ合わせることで結合し固まる性質がありますが、この仕組みを応用したのがコンクリートです。
水を混ぜ合わせたセメントはセメント水和物とよばれますが、一旦固まったセメントは水に溶け出すことはありません。しかし、さまざまな物質と化学反応を起こすことで、セメント水和物は溶解し強度が低下する場合もあるのです。
セメント水和物の膨張
セメント水和物は溶解するだけでなく、化学反応によって新たな物質がつくられることもあります。すでに高密度で固まっているセメントの内部で、新たな物質がつくられるということは、内部で膨張を引き起こすことを意味します。
コンクリート内部で膨張に耐えきれなくなってくると、内部の圧力が高まりヒビ割れが起こるケースもあるのです。
化学的浸食を引き起こす主な原因物質
コンクリートの化学的浸食は、さまざまな物質との化学反応によって起こると紹介しました。具体的にどういった物質が化学的浸食を引き起こすのでしょうか。代表的なものをいくつか紹介しましょう。
酸性物質
温泉のお湯や動物性・植物性脂肪、乳酸など、私たちの身の回りにはさまざまな酸性物質があります。これらはコンクリートに含まれる炭酸カルシウムと反応することで徐々に溶解していき、化学的浸食を引き起こします。
アルカリ性物質
酸性とは対照的な位置にあるアルカリ性物質もコンクリートの化学的浸食を引き起こします。アンモニアやナトリウム、カリウムなどがアルカリ性物質の代表例といえ、特に強いアルカリ性物質はコンクリートを徐々に浸食していきます。
塩類
塩類とはナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどが代表的であり、コンクリートの水酸化カルシウムと反応することで膨張します。特に潮風が強い沿岸沿いや、融雪剤が使用される寒冷地などにおいて注意が必要です。
ガス
塩化水素や硫化水素などのガスは、さまざまな物質の腐食を引き起こす腐食性ガスとして知られており、コンクリートも例外ではありません。特に塩化水素は水に溶け出すこともあり、コンクリートに浸潤することで化学的浸食を引き起こしやすくなります。
コンクリートの化学的浸食が起こりやすい場所・環境とは
コンクリートの化学的浸食は、たとえば油脂類がコンクリートに付着したからといって即座に溶解したり膨張したりすることはありません。仮に、上記で紹介したような化学的浸食を引き起こす物質が付着したとしても、速やかに洗い流したり除去したりすれば被害を防げるでしょう。
また、酸性物質やアルカリ性物質、塩類、ガスなども、それぞれの物質の濃度が低い場合には化学的浸食のリスクも低いといえるでしょう。
では、コンクリートの化学的浸食が起こりやすいのは、どのような場所が挙げられるのでしょうか。特に注意したいのは、つねに原因物質が付着しやすい環境や場所です。たとえば、硫化水素が立ちこめている温泉地、酸性の土壌のうえに建っている構造物などが挙げられるでしょう。
コンクリートの化学的浸食を防ぐためには
特殊な環境下でない限りは、コンクリートの化学的浸食のリスクは低いといえるでしょう。しかし、短期間で浸食することはなくても、長い年月をかけて徐々に浸食していくケースもあります。
そのため、コンクリートの化学的浸食には一切の対策が不要というわけではなく、定期的に検査やメンテナンスを行い異常がないかを調べておくことが重要なのです。
今回紹介したような酸性物質やアルカリ性物質、塩類、腐食性ガスなどの影響が考えられる構造物がある場合、化学的浸食が発生していないかを調査し適切なメンテナンスを行うようにしましょう。