コンクリートはなぜアルカリ性?中性化の危険性とは?
セメントと水、砂利でつくられるコンクリートは、強いアルカリ性を示します。コンクリートがアルカリ性であるのはれっきとした理由があり、構造物の安全や強度確保のためにも重要な役割を果たしています。
そこで本記事では、コンクリートがアルカリ性である理由と、中性化した場合のリスクや危険性、アルカリ性へと戻すためにはどういった工法があるのかも詳しく解説します。
コンクリートがアルカリ性である理由
コンクリートがアルカリ性であるのは、コンクリートの成分と製造過程が大きく関係しています。
まず、コンクリートの原料はセメントと水、砂利などです。これらを混ぜ合わせることで、セメントに含まれた成分が水と化学反応を起こし固まります。これを水和反応とよびますが、水和反応が起こるとアルカリ性の水酸化カルシウムとよばれる物質が生成されるのです。
すなわち、コンクリートは製造過程において水和反応が起こり、その結果アルカリ性へと変化しているということです。
ちなみに、コンクリートはもともと、圧縮に強い一方で引っ張る力には弱いという特性があります。そこで、引っ張る力に対応するため、コンクリートの内部には鉄筋が使用されています。
鉄は酸化に弱い性質があり、サビや腐食によって強度が低下していきますが、アルカリ性のコンクリートで覆われていることで酸化が進まず、長期間にわたって強度を維持できるというメリットもあるのです。
「コンクリートの中性化」の意味
鉄筋と組み合わせて十分な強度を確保したとしても、コンクリートは年月が経つと徐々に劣化していきます。また、強い地震や、何らかの理由で外部から力が加わった場合なども劣化を早める要因になってしまいます。
コンクリートが劣化すると表面にわずかな隙間や亀裂が生じ、そこから二酸化炭素が内部に入り込んでいきます。
本来であれば強いアルカリ性を示すコンクリートですが、二酸化炭素が入り込むことで徐々に変化していきます。二酸化炭素との化学反応が進んでいくと、やがてアルカリ性を示さなくなりますが、これを「コンクリートの中性化」とよびます。
コンクリートが中性化することで生じるリスク・危険性
中性化が起こったとしても、コンクリートそのものの強度は変わらず、圧縮には強い特性があります。しかし、問題となるのは内部にある鉄筋への影響です。
冒頭でも紹介したとおり、鉄は二酸化炭素や酸素に触れることで酸化が進み、徐々に劣化が進んでいきます。コンクリートが中性化する前はアルカリ性によって劣化を抑えられていたものが、ガードする役割を失った結果、徐々に強度が落ちていってしまいます。
はじめの段階では鉄筋の一部が劣化していたとしても、サビや腐食が生じると鉄筋そのものの体積がわずかに増えます。体積が増えるとコンクリートの内部から押し出すようにヒビや割れが生じ、その隙間からふたたび中性化が進んでいきます。
これを繰り返すうちに、構造物全体にまで中性化の影響がおよび、強度が維持できなくなることもあるのです。
中性化したコンクリートをアルカリ性へ戻す方法
一度中性化したコンクリートは、さまざまな方法で元に戻すことができます。代表的な工法として知られているのが、断面修復方法と再アルカリ化工法の2つです。
どういった工法なのか詳しく解説しましょう。
断面修復方法
断面修復方法とは、構造物の一部が中性化し鉄筋の劣化が初期段階にある場合に用いられる工法です。
中性化したコンクリートの部分を取り除き、その部分に新たなコンクリートを流し込んで修復します。物理的に新たなコンクリートを修復するため、分かりやすい工法といえるでしょう。
再アルカリ化工法
再アルカリ化工法とは、広範囲にわたってコンクリートの中性化が見られる場合に有効な工法といえます。
中性化したコンクリートに陽極材とアルカリ性の電解質溶液を置き、電源装置の陽極に接続します。陰極にはコンクリートの鉄筋を接続し、この状態で直流電流を流すと、コンクリート表面の電解質溶液が内部まで浸透し、アルカリ性質を取り戻すことができるのです。
なお、アルカリ化工法で電流を流す期間は、1平米あたり1Aの電流で1〜2週間程度が一般的です。
なお、再アルカリ化工法でアルカリ性を付与できたとしても、時間の経過とともに再び中性化することも考えられるため、表面を保護するためのコーティングなども一緒に施工するのが理想的といえるでしょう。
こまめなメンテナンスと検査でコンクリートの中性化を防止しよう
コンクリートはわずかな隙間やヒビから中性化が進み、内部の鉄筋が知らないうちに腐食する危険性があります。一見すると正常に見える構造物も、実際には内部で劣化が進んでいるケースは少なくありません。
気づいたときには手遅れの状態だった、ということがないように、こまめなメンテナンスや検査を行いコンクリートの中性化を防ぎましょう。