コンクリートのひび割れの原因の種類やパターンについてご紹介
建物や構造物の建設に欠かせないコンクリート。基礎の材料として用いることもあれば、建物の外壁などに用いるケースも少なくありません。
しかし、気象条件や施工方法など、さまざまな要因でコンクリートにひび割れが発生することがあります。たとえば、「せっかく施工が完了したのに、数ヶ月してひび割れが起こってしまった」となると、補修や改修工事が求められることもあるでしょう。
そこで今回の記事では、コンクリートにひび割れが発生するのはどのような原因が考えられるのか、代表的なパターンに分類したうえで詳しく解説します。
ひび割れ種類① 乾燥収縮
コンクリートが打設された直後、内部には一定量の水分が含まれていますが、長い歳月が経過するとともに水分は蒸発していきます。するとコンクリート内部の体積が徐々に減少していき、乾燥によってひび割れが発生しやすくなります。
周囲の温度や湿度といった外的要因も大いに関係しますが、それ以外にもコンクリートに使用する材料や配合する水の比率も乾燥収縮に大きく影響することが分かっています。
乾燥収縮を防ぐためにはいくつかの方法がありますが、特に骨材を見直すことは重要なポイントといえるでしょう。一般的には石灰石骨材を用いる方法が知られていますが、それ以外にも収縮低減剤や膨張剤といった混和剤を用いることも有効です。
ひび割れ種類② セメント水和熱
コンクリートの原料となるセメントにはさまざまな鉱物が含まれていますが、水と練り混ぜることで水和反応とよばれる化学反応を起こし、熱をもちます。
これを水和熱とよびますが、水和熱は外気温やセメントの量などによっても上昇幅が異なります。コンクリートに限らず、物質の多くは熱をもつと膨張し、冷えると収縮するといった特性がありますが、コンクリート内部と表面の温度差が大きいとひび割れが発生しやすくなります。
セメント水和熱によって生じるひび割れは直線的に現れるケースが多いですが、コンクリート部材を貫通するケースもあれば表面だけにひび割れが起こるケースもあります。
ひび割れ種類③ 沈下ブリーティング
コンクリートに含まれる水分は打設後、徐々に表面へ上昇し蒸発していき、蒸発した分の体積が減りコンクリートの嵩(かさ)も下がっていきます。
しかし、上部に鉄筋がある場合、強制的にコンクリートの沈下が抑制されてしまい引張力によってひび割れが発生することがあります。このような沈下ブリーティングが発生しやすい原因としては、水の量が過剰である場合や骨材の粒度、施工時の打ち込み速度および打ち込み高さに問題がある場合などが挙げられます。
沈下ブリーティングを防ぐためには、水量が少ないコンクリートを打設するほか、打ち込み速度や高さに配慮して施工するなどの対策が求められます。
ひび割れ種類④ 環境や湿度変化
コンクリートは熱によって膨張する性質がありますが、10mの部材が10℃上昇した場合、その膨張率は約1mmに達します。これは温度が低下した場合も同様で、周囲の温度によってコンクリートの体積が変化することによってひび割れが生じます。ただし、温度変化によるひび割れと一口にいっても、内部拘束と外部拘束の2パターンがあります。
内部拘束は中心部の温度と表面の温度差によって生じるもので、コンクリート部材の厚みが大きくなるにつれて起こりやすくなるのが特徴。一方、外部拘束は既設コンクリートなどの上に新たにコンクリート部材を打設した場合に、温度変化による収縮が妨げられることで発生するひび割れです。
ひび割れ種類⑤ 荷重・構造物の不等沈下
コンクリートを支えている地盤が不等に沈下することでひび割れが生じることもあります。不等沈下が発生する原因はさまざまですが、典型的な原因としては建物や構造物そのものの荷重バランスがとれていないケースです。一方にだけ荷重が偏っている場合、建物を支えるコンクリートに均一的に荷重が加わらず、圧力に耐えきれなくなりひび割れが発生してしまいます。
また、もう一つの典型的な原因として地盤を支えている支持層が変化することも挙げられます。特に地盤のなかに水分が多く含まれている粘土質の支持層と、水分が少ない層の間に構造物を建ててしまうと、バランスがとれなくなり不等沈下を起こすケースがあります。
ひび割れ種類⑥ 低品質な骨材
骨材とは、コンクリートを作る際にセメントや水と一緒に混合する材料のことを指します。具体的には砂や砂利などを指す場合が多く、骨材を混ぜ合わせることでコンクリートが凝固する際の熱を抑制したり、固まった後の収縮幅を抑える効果があります。
コンクリートと聞くとセメントを固めたものというイメージをもたれる方も多いですが、実際にはセメントの配合量はわずかであり、そのほとんどが骨材で構成されているといっても過言ではありません。
骨材は砂や砂利の粒度によって「粗骨材」と「細骨材」に分類され、用途や形状に合わせて用いる骨材のバランスも重要となります。骨材の良し悪しによってコンクリートの品質が左右されることも多く、低品質な骨材で作ってしまうとひび割れが生じやすくなります。
ひび割れ種類⑦ アルカリシリカ反応
コンクリートの骨材にはシリカとよばれる物質が含まれており、長い歳月をかけてシリカが溶解してくることがあります。シリカが溶解すると、コンクリートの素材として用いられるセメントやアルカリ金属などと化学反応を起こします。
この化学反応によってアルカリシリカゲルとよばれる物質が生成され、コンクリート内部で水分を含み膨張しひび割れの原因となることがあります。ちなみに、アルカリシリカ反応を生じさせる代表的なシリカ素材としては、クリストバライトやトリジマイト、オパール、火山ガラスなどが存在します。
ひび割れ種類⑧ 混和剤の不均一な分散
混和剤とは、コンクリートの性質を高めるために用いられる薬剤の一種です。具体的にはAE剤や起泡剤、発泡剤、減水剤、流動化剤、収縮低減剤などさまざま種類があり、混和剤によっても作用は異なります。
混和剤をコンクリートへ混ぜ合わせることで強度や耐久性、水密性が改善されますが、コンクリートの混ぜ合わせが不足し不均一な状態になっていると、強度や耐久性のバランスが崩れてしまいます。その結果、コンクリートの品質が安定せずひび割れの原因となることがあります。
まとめ
今回紹介してきたように、コンクリートのひび割れが発生する要因は複数存在し、気候条件によって起こるものもあれば、施工の良し悪しや建物の構造による違いなど、さまざまなパターンがあります。乾燥収縮や温度変化など、気候条件によって起こるひび割れは防ぎようがないと考えがちですが、適切な骨材や混和剤を選ぶことによってひび割れを抑制することも可能です。
さらに、構造物を建設する前の段階で地盤の安定性や性質を調べておくことで、不等沈下も防止できます。
建物や構造物の建設にあたってコンクリートを用いる場合には、今回紹介したひび割れの種類やパターンをあらかじめ把握しておき、適切な方法で施工するようにしましょう。